美濃の『まむし』というのが斎藤道三につけられたニックネームだった。道三は一介の油売りから身を起こし、一代で美濃の国主となった男である。
道三は油を売りながら諸国を回り情報を集めてチャンスをうかがってきた。そして美濃の国が一番乱れているのに目をつけて、ここを足場にしようと決め、城下にせっせと油を売り歩いたのである。
道三の行商にはおもしろい特徴があった。油を売るとき、必ず都のはやり唄を聞かせたり、舞いをみせたりするというサービス精神が旺盛だったのである。また油を客の油壷の中に入れる時、じょうごを使わず一文銭の穴の中を通すという芸までやって客の心を確実につかんだのである。セールスに関しては天分の才能があったようだ。
道三は頭の良さとこの『ぬけめなさ』で、自分の目的を達成するためにはありとあらゆる術策を張りめぐらしたのである。やがて美濃の国主となってからも、昔、諸国を行商して歩いた経験を生かし、豊かな城下町を作り上げた。
『井の中の蛙、大海を知らず』ということわざの通り、もっと広い世の中に出て経験や情報を自分のものにすることによって、また違った新しい道が見えてくるような気がするのだがどうだろうか。
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