戦国新報
 
 
平成6年 後期
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落ちぶれた時の親友が本当の親友
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 石田三成は、寺の小坊主時代に豊臣秀吉に発見された武将だ。
 豊臣秀吉が死んで、徳川家康のわがままが募った。怒った三成は『家康打倒』を考え、秀吉に恩を受けた武将達に告げた。しかし、加藤清正をはじめ、福島正則など親豊臣大名達はことごとく横を向いた。三成は孤立し、誰もよりつかなくなった。『勢いのある時はみんなチヤホヤして寄ってくるが、落ち目になると誰も来ない』と友情の薄さを嘆いた。
 そんなとき、無二の親友の大谷吉継が訪ねてきた。喜んだ三成は『俺の企てに賛同してくれたのか』と喜んだ。が、大谷は首を振り『いやおまえの馬鹿な企てを止めにきたのだ』と言った。『歴史の流れは家康に有利だ』『そんなことはない。正義は俺にある』『そのとおりだが、それがおまえの悪いクセだ。頭のいいおまえは確かに正しい。その正しさを物差しにして人を裁く。人はすべておまえのように優秀な人間ばかりではないし、正しくもない。弱い人間もいるのだ。そこをグサッとやられれば、逆におまえを憎むようになる。この戦いは勝てない』『そんなことはない。天が必ず味方してくれる』『天が味方しても勝てない』『なぜ勝てない』『おまえに人望がないからだ』『しかしかなりの大名が参加してくれる』『みんな日和見だ。ふたまたをかけている。裏切るやつも出るぞ』
 三成は苦笑した。『大谷おまえも俺を見捨てて家康につくのか』『俺はおまえを見捨てない。だからこうしてやって来た』
 関ケ原の合戦で最も激しく戦ったのは、この大谷吉継の軍だった。主人の三成への友情に大谷の部下たちの方が感動したのだった。 今の世の中にもあてはまるような気がする。
【文:高田 金道】