戦国新報
 
 
平成6年 後期
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チリ紙一枚と徳川二百七十年の基礎
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 チリ紙一枚に目の色を変えた家康のドケチ。徳川家康はケチで有名である。だが、健康管理を兼ねた彼の生活ぶりは物を大切にする点では他の戦国武将達よりも確かに抜きでていた。
 こんな話がある。あるとき家康は大勢の大名を連れて京都の寺に参った。行事がすんでトイレに行くとき、家康は一枚のチリ紙を腰にはさんで入った。トイレから出て手を洗い拭こうとした時、風が吹いてチリ紙が飛んでしまった。すると家康は足袋のまま庭に飛び降り、走って紙を追い、宙に飛び上がってようやくチリ紙を捕まえた。
 大名たちはクスクス笑った。中には「徳川殿はケチだ」とささやく者もいた。家康はその大名をジロリと見てこう言った。「何がケチだ。わしはこうやって天下を取ったのだ」
 何もチリ紙一枚で天下を取ったとは言わないまでも、家康のドケチぶりは相当のものだったようである。
【文:高田 金道】