戦国新報
 
 
平成12年 前期
もどる
秀吉もビックリ
すすむ
 世の中平和である。だが不況でどうしようもない。でも平和だから土、日曜になると、自分の趣味に励む人も多くなったような気がする。
 戦国の世、秀吉が天下を平定し平和になると、大名達は趣味としていろいろな芸術品を集めるようになり、それを財産として披露し始めた。ある日、秀吉は大名達に「お主達もさぞかしすばらしい名品を持っているだろう。わしに見せてくれ」と訊ねた。
 大名達はそれぞれ宝物を見せあった。だが一人だけ黙っている人物がいた。「徳川家康」である。秀吉は「さっきから黙っておるが、徳川殿の宝物は何ですか」と訊ねた。家康は静かに「宝物は私のために命を捨てる五百騎の部下でございます」と応えた。他の大名達は一瞬ハッと目を見合わせ、つまらぬ自慢話をしたことを恥じた。さすがの秀吉も家康を誉めたたえたという。家康の発言は今で言えば「我社の社有財産は社員である」ということになる。家康は幼少時人質の経験を持っている。しかし家臣達は家康を見捨てることなく、「必ず若君の時代がきます。それまで我慢してくだされ」と励ました。
 いつの時代も我慢することはむずかしいことだが、この不況には、我慢とチャレンジ精神でがんばることが大事なような気がするが、なかなかむずかしいことだ。
【文:高田 金道】