戦国新報
 
 
平成12年 前期
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悪条件の中でがんばる…
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 恵まれた環境と条件に沿ってスタートした場合と、何も揃ってない条件のスタートでは、大きな苦労の差がある。しかし結果が良い方向に向かった時、悪条件でスタートした時の方が、喜びが倍大きい。
 戦国の世、武田信玄の領土、甲斐の国は、小国で条件の悪い場所だった。田んぼは少なく耕地はほとんど痩せた畑が多かった。そのため生産性も低く、経済は苦しく裕福なところは滅多になかった。尾張、越後、駿河等とは比べものがなく劣っていた。この条件の悪い国で、どこにも負けない騎馬軍団を作るのは並大抵のことではなかった。騎馬軍団を作るには資金がいる。そのため信玄は、経済の基盤である農業を大切にし、領民を大事にし、領民と共に苦労しながら国を強くしていったのである。だからこそ戦で勝ち取った新しい支配地でも農民の心を掴んでいた。その人心に対する細かい配慮は、恵まれた条件や体験しか持たない人間からはとうてい生まれなかったものであるような気がする。
 不況の今の世も、この悪条件を、這い上がるためのひとつの糧としてがんばることで良い方向に進むような気がするが、なかなかむずかしいことだ。
【文:高田 金道】