戦国新報
 
 
平成12年 前期
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最後まであきらめない…
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 若乃花が土佐ノ海に土俵際まで押し詰められた姿勢は「大ピンチ」であるが、「うっちゃり」を狙う若乃花にとっては、土俵際ギリギリのところが最高の「チャンス」である。必ず倒すという執念から勝負が生まれ、一瞬の「大ピンチ」が「チャンス」に変わることがある。
 戦国の世、明智光秀が本能寺で信長を倒したその時、秀吉は中国地方で毛利方と戦っている。秀吉は本能寺の変を隠し通して毛利方との講話交渉に入る。イチかバチかの大勝負である。一日のうちに交渉は妥結し、翌日夕刻、すぐに高松の陣を引き払った秀吉は、悪条件にもかかわらず、八十キロもの行路を走破した。世に言う「中国大返し」である。光秀は、秀吉がこうも迅速に京都に迫るとは夢にも思っていなかったと思う。秀吉のあまりの早さに、光秀軍は総崩れとなり、山崎の合戦は秀吉の大勝利に終わった。秀吉の大ピンチがチャンスに変わった瞬間である。秀吉の人間性もあったと思うが、何事にも最後まで物事を「あきらめない」ことに勝利があったような気がする。
 不況の世の中、知恵のある者は知恵を出し、知恵のない者は汗を出し、汗の出ない者は足を使って、最後まであきらめないで一生懸命努力することが大事なような気がするが、なかなかむずかしい。
【文:高田 金道】