戦国新報
 
 
平成12年 後期
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人をけなすよりも誉めることを貫いた秀吉
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 人は、相手を誉めることができそうでなかなかできない。なぜなら、相手の優位を認めたくない気持ちがどこかにあるからだ。しかし、たとえ相手が自分より優れていても、自分に「自信と余裕」があれば、相手を心から素直に誉めることができるのではないだろうか。
 「誉める」ということは、「けなす」ことより実は難しい。相手をけなすのは簡単だが、誉めるには自分自身の心の在り方が作用するからだ。相手をけなすだけで誉めることのできない人は、人を認めることができず、人の長所も短所も見抜くことができない。しいては、自分自身の長所、短所さえも自覚できないように思う。
 戦国の世、百姓から天下を取った秀吉ほど、相手を誉めたたえた武将はいなかった。秀吉は「人を誉めて損をすることは何もない、逆に良いことの方が多いのだ」と言った。戦いの後、家臣一人ひとりの手を取り、肩をたたき「良くやった」と誉めたたえた。そうすることで、家臣達の心も自然に開き、さらに忠誠を誓ったのである。そんな秀吉の真摯な姿勢が世に広まり、秀吉の周りには多くの人が集った。人が集まれば多くの情報も入る。
 人は誉められることによって自信が生まれ、能力が高まるとともに、思わぬ力を発揮することもある。秀吉はそうした人間心理を見抜き、また、素直に人を誉めることによって、天下への道をつかんだのである。
 世の中、素直に素晴らしいことは誉めたたえ、良いことには手をたたけるようありたいものだ。そして、わからないことは素直に人に尋ね、常に自信を持って頑張ることが大切なような気がするが、実はなかなかむずかしい。
【文:高田 金道】