戦国新報
 
 
平成11年 前期
もどる
常に冷静に…
すすむ
 毎日できるならニコニコと明るく楽しくおだやかな心を持って生きたいと思うが、時には頭にくることもあれば、気分がスッキリしない時もある。こういった「感情」が表に出てしまうと周囲に悪影響を与えたり迷惑をかけたりしてしまう。
 秀吉が小田原城包囲の最中に「能楽」を催した時の話である。部下達は会場の前を通る時、皆馬から降りて通過した。しかしたった一人馬から降りず兜も脱がず通り過ぎた武将がいた。宇喜多秀家の家臣、花房助兵衛である。彼は「戦場で能楽を催して遊ぶようなたわけた大将は頭にくる」と吠えた。これを聞いた秀吉は怒りに怒り、切腹を申しつけようとしたが一瞬、「冷静」になった。「今この天下において、この秀吉に向かってあのように大言できる者は他にいるとは思えない。あっぱれな大剛の武士である。切腹させるには惜しい」と逆に知行を加増したと言う。「一瞬」の「感情」に流されず「冷静」に判断したのであった。
 不況の今の世も常に冷静な見方で世の中を見つめ、判断することが大事なような気がするが、なかなかむずかしい。
【文:高田 金道】