敵に塩を送る
相手が困っている時、温かい手を差し伸べて協力してやれるか…。逆に人の弱みにつけこんで揺さぶりをかける人、世の中には色々な人がいるが…。
戦国の世、謙信と信玄は川中島の合戦のライバル。信玄を恐れた隣国の今川家と北条家は手を結び、甲斐の国への「塩輸送」を全面的に停止した。困った信玄。塩は「生命の糧」であり「活動の源」であって人が生きていくためには必要なものである。この話を聞いた謙信の部下達は今こそ信玄を倒す絶好のチャンスだとばかりにわめいた。だが、謙信は信玄に書状を送り、「お主とは敵だが領民達は敵ではない」と塩を大量に送った。塩を見た信玄は感激して涙を流して謙信に感謝した。世に言う「敵に塩を送る」というささやかな愛情のことわざになった話である。
いつの世も、ライバル同士はお互い切磋琢磨して努力するということは大変良いことだが、「敵に塩を送る」ということは簡単なようでなかなかむずかしい。(令和三年三月二十一日)