秀吉の「長短槍試合」は有名な話である。ある正月、信長は「槍というものは、長いのが有利か、短いのが有利か?」と部下達に聞いた。槍術教師の上島某は、短槍の方が絶対有利だと言ったが、秀吉は長い槍の方が有利だと言った。信長は「それでは二人に足軽五十人ずつ与えるから三日後、俺の前で試合しろ」と命じた。
上島は五十人の足軽をバラバラにし、一人ひとりに槍術を教えた。せっかくの集団をバラバラにしてしまったのである。反対に秀吉は槍の稽古はまったくしなかった。彼は三日間足軽達にただひたすら「飲ませた」のである。自宅で妻のねねとともに、槍の話は全然しないで足軽たちをご馳走ぜめにしたのである。上島側の足軽達がひとりづつコテンコテンに鍛えられ、ののしられている時に、秀吉側は、毎日飲み明かしていたのである。こういう秀吉の態度に、足軽達の方から「このままでは負けてしまいます。せめて槍の持ち方だけでも教えてください」と言い出した。強制された形ではなく、自分達でみずから「ヤル気」を生んだのである。結局この試合は秀吉側がチームワークで勝った。はじめから槍の長い、短いは関係がなかったのである。
仕事も同じである。ひとつの物を完成させるためには各部門のチームワークが一番大事である。ひとりがどんなにすぐれていても回りのチームワークがなくては、その仕事は行き詰まってしまう。秀吉のこうした現場主義の考え方は、今の世も見習うべきものがあるのではないだろうか。
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