山内一豊は一兵卒から土佐二十四万石の大大名に出世した。彼は特に兵略もなく、人並み以上の働きもない人間だったが、巧妙な自己PRだけで出世したといっても過言ではないだろう。
彼は「馬ぞろえ」の時、細君のかくし金で駿馬を買い、馬好きの信長の眼にとまって面目をほどこしている。この一件以来、細君の千代は「武士の妻の鏡」としての高名をフルに利用し、夫の出世のバックアップしたのである。「こまめ」に上役の細君たちを訪問し、夫の才能を売り込んでいる。一豊の出世の原因は夫婦一体の自己PRにあったようだ。
今の時代も、いくら才能を持っていても発揮されなければ、商品の在庫をかくしているようなものである。いくらすばらしい商品でもPR不足では、客はそうした商品があることを知らない訳だから、買うこともできないのである。
「能ある鷹は爪を出せ」という訳なのだが、現実はなかなかむずかしいものであるようだ。
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