戦国新報
 
 
平成7年 前期
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危機あっても沈着冷静
すすむ
 秀吉と家康が小牧で戦った時、秀吉側は二万の軍で三河を奇襲しようとした。が、その極秘作戦も家康の知るところとなり、三河へ向かう途中で徳川方の追撃を受けるはめになった。
 この時、秀吉方は『前途』にばかり気をとられて、敵に後をつけられていることに全く気づかなかった。後ろから突然襲われたため、上へ下への大混乱となり、第一隊の大将、第二隊の大将が討死し、大敗北を喫した。 ところが、その敗軍の中にあって、ひとり気をはいたのが、堀秀政の率いる第三隊であった。秀政は敵の襲撃を知るや、少しもあわてることなく、冷静に軍を整え、鉄砲隊を並べて、敵が十間以内に近づくのを待って一斉射撃を仕掛けた。徳川方は散々に打ち破れ敗走した。勝ちにはやって追撃しようとする部下を「深追いしてはならぬ」といましめ、兵をまとめて秀吉の本陣に帰った。
 何事も先だけを見ていると失敗するという例である。ゴルフでたとえれば、先ばかり見ていて足元のボールを忘れると空振りするのと同じことである。足元のボールを見てクラブを振るのが得策なのだが、初心者はどうしても先ばかり見てしまうのである。
【文:高田 金道】