琵琶湖を望む安土城とその城下町は、信長が新しい日本の首都として完璧な都市計画を行ったひとつの国家であった。
城下町経営の掟には、それまで関所のつど、払わなくてはならなかった関税や通行税を廃止し、楽市楽座をはじめとして、誰からも差別されることなく、自由に活動してよいということが定められていた。
その上、移住が自由だから、戦乱に明け暮れている領地の住民はきそって安土の町に集まった。こうして全国から集まった有能な商工業者や文化人によって、町は益々発展した。
また、中でも特に光るのは道路整備であった。
街路は長く広く、そして一日に二、三度は清掃され、町と同様にいつでもきれいな景観を保っていた。
自分達の利益のために、理由もなく関所を増やして税金を巻き上げようとしていた旧勢力と、この計画的で住みよい都市を造った信長と、人々はどちらを支持したであろうか。
信長の政策は、もちろん覇権を確立するためのものではあったが、その根底には、人々がより明るい展望をもてるような町造りをするという政策があった。
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