戦国新報
 
 
平成12年 前期
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安心して「いびき」をかける世の中
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 正月、グループで旅行に行った時、夜「いびき」をかきながら寝ている仲間の姿をながめていると、うるさくてなかなか眠れない。だが「いびき」をかいている姿をながめていると、世の中、平和、不景気なんのその、何の夢をみているか、幸せそうに見えてうらやましいかぎり。
 「いびき」をかく人と旅行に行った時は早くねたほうが勝ち。後では「いびき」で眠れないから疲れるばかり…。
 戦国の世、鬼とか天魔とか言われた信長が、ある時、戦場へ出陣の途中、領内でひとりの農民が畑のどまんなかで「いびき」をかきながら寝ていた。これを見た信長の家臣が「けしからん奴だ。領主が戦いに行くというのに、畑の中でいびきをかきながら寝ているとは。たたき切って先陣の血祭りにしましょう」と言った。
 信長はからからと笑って「やめろ。俺は俺の領内で農民が安心してあのように、土の上にひっくりかえっていびきをかいて寝ている姿を見るのが大好きだ。俺は、農民が安心して働ける戦いのない平和な国造りをするために戦いに行くのだ」と言った。また「戦いは俺達の仕事であり、農民は土を耕すのが仕事だ。たまにいびきをかいて寝ていてもいいではないか。土は農民の母親だ」と付け加えた。
 不況の世の中、「いびき」をかきながら安心して眠りたいものだが…自分の「いびき」のことはわからない。
【文:高田 金道】