戦国の世、京都に「泣き言」や「恨み言」ばかり言うおばあさんがいた。周りの人達はこのあばあさんに会うと必ず、泣き言や恨み言を言われるので、なるべく避けて通るようになった。
ある日のこと、京都所司代に任命された秀吉が、そのおばあさんを呼んで尋ねてみた。おばあさんは「私には二人の息子がいます。長男は草履売りをしており、次男は傘を売って商売をしております。雨が降ると草履が売れなくなるし、天気が良いと傘が売れなくなり、二人の息子がかわいそうでなりません。天気が良くても悪くてもお天道様がうらめしく、心のやすらぐ日がありません」と嘆いた。
秀吉は「人生には表も裏もある。裏の悪い方ばかり見ているから不平不満を持ってしまう。雨が降ると傘が売れ、天気が良いと草履が売れると、良い方向に物事を考えれば、息子たちも喜ぶことだし、お天道様にも感謝すればどうかな…」秀吉の話を聞いたおばあさんは、それから雨が降っても天気が良くてもお天道様に感謝するようになり、逆に周りの人達から好かれたと言う。
不況の今の世も、これ以上悪くならないという気持ちで一生懸命がんばることが大事なような気もするが、そういう気持ちになるのがなかなかむずかしい。
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