「サル」と信長に呼びつけられ、秀吉は草履を差し出した。草履が暖かったため信長は「わしの草履を尻にして座っていたのか」と大声を上げてどなった。秀吉は「自分の懐に入れてお待ちしておりました」と釈明した。信長は驚いて「そこまでおまえは忠勤に励んでいるのか」と感動し、それから一層秀吉に目をかけてかわいがった。
やがて秀吉が天下を取った時、ひとりの部下が秀吉に「殿下は信長公に仕え、草履取りをしていた時、すでに志は天下取りにあったのでしょうか」と尋ねた。秀吉は大笑いをしながら「わしは草履取りの時にはどうすれば日本一の草履取りになれるのかとそればかり考えていた。何の仕事でも与えられた仕事は努力して、熱中することである。そうすれば良い知恵も出るしおのずと運も開けてくる」と答えた。
不況の世の中、やはり自分の仕事に「熱中」し、がんばることで良い方向に進んでいくような気もするがなかなかむずかしい。
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