戦国新報
 
 
平成9年 前期
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人が嫌がる仕事を進んでやる
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 いい仕事やうま味の多い仕事をやりたがる人は多いし、また当たり前のことである。だがそれで本当の自分の評価を得られるだろうか。人から信頼されるためには人の嫌がる仕事を進んでやることによって、会社あるいは周りの人間から良い印象を得られる気がする。 破竹の勢いで成長してきた信長があわや滅亡という危機に立ったことがある。朝倉一族と敦賀地方での戦いの最中、自分の妹が嫁ぎ同盟を結んでいた浅井長政の裏切りによって、背後を襲われた時である。絶対絶命のピンチに撤退をするため、誰かが敵を防ぐために、死を覚悟の「すて石」とならなければならない。この「しんがり役」を誰にするかで信長は悩んでいた。その時である。「織田家のためなら私がやります。自分は死にまする」と秀吉が名乗りでたのである。各武将達が感動し、あの冷酷非情の信長でさえ涙を流して「生きて帰ってくれ」と言ったという。 そしてこの「しんがり役」は見事に成功したのである。秀吉の評判はこの一件でいっきょに上昇し、スピード出世の階段を昇り始めるのである。 誰もが嫌がる仕事を進んでやることによって、深い信頼関係が生まれるし、目先のことだけにとらわれず必死に働くことが周りの仲間からより高い評価が得られるような気がするが、だがなかなかむずかしい。
【文:高田 金道】