戦国新報
 
 
平成9年 前期
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聞きたくない話しにも耳を傾けた家康
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 世の中には、頑固に自分の考えが正しいと信じて疑わない人種がいる。誤ったことに対しても他人の意見には決して耳を傾けようとしないし、仲間が好意を持って忠告をしても聞き入れようとしない。逆に忠告されたことに腹を立てる。
 家康の言葉に「主人の悪事をみて過言する家老は、戦場において一番槍を突き立てることよりも、はるかに増したる心根なるべし」というのがある。 家康の部下である本多正信は、家康に対して何度となくいろいろなことを進言しているし、家康もまた、正信を信頼して、その意見にはよく耳を傾け、たとえそれが取るに足らないことであっても熱心に聞いた。
 後で役に立つことであれば用いればよし、そうでなければ用いなければいいのである。
 たとえば一週間かかって読んだ本の内容を他人に教える。聞いた人はその本を五分で読んだようなものである。家康の言葉の中に徳川三百年の基礎が隠されているような気がする。
 家康は、忠告や意見がいかなる内容であっても、よく教えてくれた人には感謝の気持ちで聞くべきだと言っている。
 今の不況な世の中も、自分の話しの倍は、人の話しを聞くことが大事なような気がする。だが、なかなかむずかしい。
【文:高田 金道】