戦国新報
 
 
平成8年 後期
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いつも明るく
すすむ
 昔、良くしてもらったことは忘れることもあるが、ひどい目にあったことはなかなか忘れない。良くしてもらったことはいつまでも覚えておいて、ひどい目にあったことは忘れることだ。これが自分に多くの味方をつけることになる。
 秀吉は過去のことに対して、根にもたないタイプだった。驚異的なスピードで出世した男だったが、過去にひどい仕打ちをされた人間に対する復讐などしなかった。
 相手が自分を手痛い目にあわせた場合、むしろその有能さを認めて積極的に部下にしようとした。戦いの最中でも自分の痛手を忘れて、相手の手腕を認めて部下にしようとした。
 こうした秀吉の決して根にもたない明るい性格が世間に知れ渡るようになると、戦う前に降伏してきた者もいた。天下統一できたのもこの生まれ付きの根に持たない明るい性格のおかげといってもいいだろう。
 信長は違っていた。根に持つタイプで有名である。十年前の出来事を掘り起こして追放された部下もいる。数々の新戦略を打ち出し、革命的な業績を残しながら、根に持つ性格から天下統一を目の前にして、成し遂げられなかった。
 現代のビジネスマンは秀吉派か信長派か。秀吉のように根に持たなく明るさを身に付けて頑張ることによって、良い方向に進むのではないだろうか。いつも明るく笑顔でがんばることは、相手にも良い印象を与えるようだ。だが、なかなかむずかしい。
【文:高田 金道】