戦国新報
 
 
平成8年 後期
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団結力
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 桶狭間の戦いで信長は天下統一への足掛かりを作った。だが若い信長に部下達全員がついて行くというのには、それなりの理由があった。
 信長は決して権力的で思いやりのない人間ではなかった。若い時から伝統的な格式や礼儀、礼式を嫌い、時には農民の踊りに飛び込み、女性のマネをしたりして、農民から笑われるようなふるまいをしていた。
 また清州の城下ではいちいち農民に、「城に上がってお茶でも飲んでいけ」と声をかけたりしたという。若いころの信長には、こうして庶民と一緒に踊って楽しむという人間的な一面もあった。これは信長の性格の一側面であり、信長独特の「人心掌握術」であった。
 信長の部下達はみんな一緒に踊っている仲間であり、わが殿が必死の覚悟で切り込むならば、我々も死ぬ気で一緒について行くという忠誠心でいっぱいだった。
 確かに情報力も大事だが、団結心がより大事なことである。それがあったからこそ、桶狭間の戦に勝利を得た。
 今の時代で考えると、社長がディスコへ行って部下達と一緒に会話しながら踊るということになるのだろうか。不況な今の時代、たまには信長のような行動も必要な気がするが、なかなかむずかしい。
【文:高田 金道】