戦国新報
 
 
平成8年 後期
もどる
人を道具とみた信長、人から学ぼうとした秀吉
すすむ
 戦国時代、いろんなタイプのトップが国を治め、しのぎを削っていた。武将の中で最もハデな感覚を持っていたのが信長。信長の好みは「馬と猿」であった。信長は馬を愛していたが、馬そのものよりも道具としての「性能」を愛した。猿とは秀吉のことである。秀吉も馬のように道具として考えられ、仕事ぶりを評価される時は人でなく、その能力を信長は誉めたたえた。能力のない者はどんなに人柄が良くても、過去に功績があっても、できの悪い道具として捨てた。
 だが、秀吉は信長と違って、人を道具として見ることはしなかった。どんな人間にもその人の持ち味を見つけた。そしてまた、どんな人間からでも何かを学ぼうとした。人間とは自分に何かを教えてくれるものだと暖かい目で人を愛した。
 信長は人間の性能を生かし、戦国随一の機械的な組織を作り、それを馬のように乗りこなし、天下を統一しようとした。だが人の心を計算に入れなかったので、自分の部下の反乱で滅んだ。 信長の作った組織を本当に使いこなしたのは秀吉だった。そして信長のできなかった天下統一の事業を完成させたのである。
 今の世も秀吉のようにいろんな人と出会いそして、その人の何かを学ぼうとすることによって自分の会社のために役立つのではないだろうか。だがなかなかむずかしい。
【文:高田 金道】