戦国新報
 
 
平成7年 後期
もどる
人生の『イロハ』を行商で覚えた秀吉
すすむ
 秀吉が日吉丸と名乗ってまだ信長に仕える前のことである。自分の就職を杉原家次という武将に相談したところ『お前は物売りが似合うから行商をやりなさい。これからの武将の家の経営も商人的感覚がなければダメだ。諸国を行商し、どこの国の人がどういう生き方をして、何を欲しがっているか自分の目、足を使って確かめて来い。いろんな人と対話し、一度商売した人間とは誠実につきあうこと。これが大事だ』。また、『一度の取り引きだといっていい加減なことをすると必ず他人に伝わってしまう。商売の財産はいい人間関係にある』。ようするに徹底した商売感覚をこの杉原家次から教えられたのである。
 また行商時代に蜂須賀小六や青山新八などの夜盗のリーダー達と知り合い、彼らからは『部下の生活保証』にかける責任感というものを教えられた。その後、信長の家来になった秀吉は真っ先に彼等夜盗のリーダー達を推挙して家臣に加えてもらうのである。そして秀吉の出世の糸口になった、墨俣(すのまた)一夜城を作り上げたのもこの連中の応援があったからである。
 今の時代も会社経営の重要なカギはこの商売の『良い人間関係』と『部下の生活保証』にあるのではないだろうか。
【文:高田 金道】