戦国新報
 
 
平成16年 前期
【 H16.5.16】
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ピンチの抜け道
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 普段から小さなことに「気がつき、気配り」のできる人は「ピンチ」になった時に、突破口を見つけやすいと言う人もいる。
 戦国の世、秀吉が長浜城主になった頃の話である。鷹狩りの帰り、喉が渇いたので近くの寺に立ち寄った。応対に出たのが十五歳くらいの小坊主であった。お茶が欲しいと言ったところ、一杯目は飲みやすいようにぬるまめのお茶を差し出した。秀吉は一気に飲み干し、さらにもう一杯命じた。二杯目はやや熱めのお茶が出された。それを飲み干し喉の乾きもおさまった秀吉は、あともう一杯と命じた。三杯目は香りの良い熱いお茶を少々差し出した。
 秀吉はこの小坊主のお茶の気配り用に感心して、住職に頼み、城に連れ帰り側に置いて武将として育てた。後の石田三成である。秀吉いわく「よく気がつき、気配りのできる人間は、仕事もできる」ということを実践した人物である。
 今の世、大きなことばかりに目をとらわれていると、小さな事を見逃してしまうような気がする。しかし小さな事に気がつくことは、神経質になることではない。小さなことに「気がつき、気配り」のできる人は窮地に陥った時、脱出口を見つけやすいような気がするが、なかなかむずかしい。

【文:高田 金道】