戦国新報
 
 
平成15年 後期
【 H15.10.19
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この人のために…。
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 「この人のためなら」とか「あの人の言うことなら」という気持ちを奮い立たせる人望のある人が、回りに多いか少ないかによって、自分の将来も大きく変わるような気がするが…。
  戦国の世、若き日の秀吉のエピソード。長い槍が有利か短い槍が有利かという論争が、織田家の正月の顔合わせ会で起こった。多くの武将達は振り回しやすい短い槍の方が有利だと言ったが、秀吉だけは遠くから攻撃できる長い槍の方が有利だと言った。回りの武将達は、百姓上がりは武術がないからと皆笑った。そこで信長は、お互い足軽十人を与えるから三日後に試合をしてみろと言った。
 短い槍の方は毎日必死で練習したが、秀吉の長い槍の足軽達はろくに練習もしないで毎日酒盛りし楽しく過ごした。
 試合の結果は秀吉の長い槍の方の圧倒的な勝利で終わった。なぜ秀吉方が勝ったのか。槍の長い短いということは、足軽にとってどうでもいいことだった。ただ「秀吉のために」という思いで死に物狂いで一所懸命戦った結果であった。
 いつの世も「この人のために」ということがいかに大事か…。信頼のある人望のある仲間が、自分の回りに多い方が、必ず良い方向に進むような気がするが、なかなかむずかしい。

【文:高田 金道】