戦国新報
 
 
平成14年 後期
【 H14.10.20
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引き際
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 友人にパチンコの好きな人がおりますが、どうも勝った時のことしか言わないようだ。勝っている時にやめておけばいいのに、熱狂して調子にのり「もっともっと」と期待をし、何時間も打ち続ける。結局最後は負けるケースが多いと言う。「勝って兜の緒を締めよ」ということわざがあるように何事も「引き際」が肝心である。
 戦国の世、伊豆相模の国の領主、北条氏康は「攻めるときと引き際の判断を誤るな。そしてその判断には固い信念を持つことが大事だ」と言った。北条領内に、上杉、今川の連合軍八万の大軍が攻めてきた。北条軍はわずか八千五百。氏康絶対絶命のピンチである。この時、氏康は 綿密な計画で夜中に奇襲攻撃をかけた。上杉、今川の連合軍は大パニックにおちいり、大軍は退却した。戦は北条軍の大勝利となったが、さらなる追撃をと各武将達は主張した。しかし、氏康はこれを許さず、ほら貝を鳴らして部下達を撤退させた。「勝って兜の緒を締めよ」というのである。
 今の世の中、仕事がうまくいっても決して油断をせずに、気を引き締めて用心してがんばらなくてはと思うのだが、なかなか引き際がむずかしい。

【文:高田 金道】