戦国新報
 
 
平成12年 後期
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小さな問題の大きなしっぺ返し
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 毎日仕事をしている中で、自分では気づきもしないことを他人から指摘されて「ハッ」とすることがある。他人は自分のことを見てないようで、驚くほどよく見ているようだ。人がせっかく好意を持って指摘してくれるのだから、よく耳をかたむけて反省した方が自分のためになるのだが…
 戦国の世、伊豆、相模一国を支配していた北条氏康が、自分の息子氏政と昼食を共にした時の話である。氏政がご飯にみそ汁を二度かけて食べたのを見て、氏康は突然落涙した。「毎日飯を食べることは習慣のはず。それなのにみそ汁の適量もわからず、二度もかけて食べるとは。こんなささいなことがわからないようでは、どうして人の心を読み取ることができようか」と息子に忠告した。氏政はたいしたことではないと笑って濁した。だがこの時の氏康の指摘は見事に的中した。早雲から始まった北条家も、氏政の代にして滅んでしまった。一杯のみそ汁もたいした事ではないのだが、見る人にしてみれば決してつまらないことではない。「小事は大事」と自らによく言い聞かせることが大切であるような気がする。
 不況の世の中、自分の周りの小さなことをひとつひとつ改めることを心がけ、そして他人の意見にも耳を傾けるべきだと思うのだが、なかなかむずかしいことだ。
【文:高田 金道】