戦国新報
 
 
平成11年 後期
もどる
人の話を良く聞き自分のものにする
すすむ
 優れた人の話を横取りして自分のものとし、そして自分の能力を付け加えることで、もっとすばらしい知恵が出てくるような気がする。
 戦国の世、妻のへそくりで馬を買ってもらったことで有名な武将は山内一豊である。一豊が出世のきっかけを作ったのは関ヶ原の合戦前、家康につくか三成につくかで迷ったことに始まる。
 一豊の先輩に堀尾忠氏という武将がいた。若いがなかなかの知恵者であった。忠氏は「私は家康殿に味方する。そしてその証に城をそっくり家康殿に差し上げる。また人質も出す。私自身は先駆けとして勇敢に戦う決心である」と言った。
 一豊は感心した。そして家康の前で真っ先に忠氏の言った言葉を自分の言葉として堂々と発言した。家康は感心し感動した。
 帰りがけ忠氏は「おぬしにしてやられたな」と冷やかした。一豊は「優れた人の言うことを横取りすることを大智というそうだ。今日の私はまさに大智だった」と忠氏に感謝した。この時の一言で一豊は土佐二十四万石の大大名に取り立てられた。
 不況の世も、人の良い知恵や話には素直に耳を傾け、自分の能力を付け加えることで、この不況を乗り越えることができるのではないだろうか。だがなかなかむずかしい。
【文:高田 金道】