戦国新報
 
 
平成10年 前期
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強気の先行投資
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 出世した上司を若い部下達は真似るものである。
 戦国時代、秀吉が過剰とも思える先行投資で出世したのを目の当たりにした家来達も、良い人材を揃えて次の合戦に備えた。
 例えば石田三成は二十五歳で近江水口四万石を与えられた。この時、島左近を家来にした話は有名である。なんと三成は自分の石高の半分の二万石で召し抱えたのである。これに秀吉は「主君と家来が同じ石高というのはいままで聞いたことがない」と驚いたと言う。三成は「私は次の合戦で手柄をたて十万石に加増していただく所存でございます。そうなれば私は八万石、家来の左近は二万石で釣り合いが取れます」と答えたという。
 人材を求めるのに物惜しみしなかったという話は、不況な今の世にも十分通用する話ではないだろうか。企業の発展において、設備投資も大事ではあるが、人材の先行投資の方がはるかに大事なような気がするが、なかなかむずかしい。
【文:高田 金道】