敵に塩を送る。涙の感謝。
人が困っている時に温かい手を差しのべられるか。簡単なようでなかなか勇気が必要だが…。
戦国の世、川中島の戦いで五回の合戦でも決着がつかなかった、越後の龍と恐れられた謙信と甲斐の虎と恐れられた信玄。二人は生涯のライバルであった。その信玄が東海地方へ進出した時、他国の大名たちは甲斐の国への「塩輸送」を前面禁止した。甲斐の国は海に面してないので「塩」を取ることができない。「塩は生命の糧」であり「活動の源」といわれ、人が生きていくために重要な食べ物である。さすがの信玄も領民も自滅するしかないと思った。この話を聞いた謙信は、人の弱みにつけこむことはできないと、信玄に書状を送り「君との戦いは領民には関係がない」と大量の塩を送った。塩を見た信玄は「涙」を流して感謝した。「敵に塩を送る」ということわざになった話である。
いつの世も、人が困っている時に温かい手を差しのべることは大事なことだが、「敵に塩を送る」ことは簡単なようでなかなかむずかしい。(令和六年二月二十五日)