初心にかえる
十四年前のプロ野球の話。「オレ流」で有名な中日の落合監督が五十三年ぶりに日本一になった。その時のMVPはテスト生で入団した中村紀洋選手だった。彼は近鉄時代不動の四番バッターだった。年俸も四億の選手だったが、会社の規則を忘れ自信過剰となり球団から解雇された。その後、どの球団からも誘いがなかったが、落合監督は年俸五百万円足らずでテスト生として入団させ、初心に帰って練習と努力と競争心がなくなれば選手生命は終わりだとプレッシャーを与えた。本人は悔し涙を流し必死の覚悟で努力して監督の期待に応えて、日本シリーズで優勝の原動力となった。その瞬間、監督への感謝の気持ちで中村選手の目から感激の涙が止まらなかった。
いつの世も、プレッシャーに耐えて物事を成し遂げると言葉で言うことは簡単だが、実際に行動を起こすとなると本人の意思が強くなければできないことだと思うが、なかなかむずかしい。(令和三年六月六日)