戦国新報
 
 
平成8年 前期
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不可能を可能にする知恵と行動力
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 舞台は山崎の合戦。その時、光秀の目の前には信じられない光景があった。それは、ここにいるはずのない秀吉の軍勢だった。光秀は激しいめまいを感じていた。「信じられない。あれは秀吉の軍勢ではなく、黄泉の国から現れた信長の軍ではないのか」しかし、かがり火にライトアップされた旗印は確かに秀吉の軍旗であった。 十日前は備中高松にいた秀吉。直線距離でいっても京都から二百キロ近く離れている。しかも秀吉の軍勢は水攻めの大工事の最中のはずで、さらにその背後には圧倒的多数の毛利軍がいる。ここまでの計画は綿密であった光秀の脳裏に、わずか九日の間に備中から反転してきた秀吉軍に対しての恐怖心が浮かんできた。 この秀吉軍の奇跡の中国大返しに圧倒された光秀軍にとって、山崎の合戦は戦わずして負けが決まっていたようなものであった。
 不可能を可能にする。言葉にすれば簡単なことであるが、この時の秀吉はまさに、自分の知恵と驚くべき行動力でそれを成し遂げたのである。
 綿密な計画でもって、これはできないと判断する光秀。奇抜な頭の回転でそれを成し遂げる秀吉。山崎の合戦はまさに、秀吉の努力の勝利だったのではないだろうか。
 今の世も、不可能を可能にするためには、普段の努力を忘れることなく、こまめに行動することが大事なのではないだろうか。
【文:高田 金道】