戦国新報
 
 
平成8年 後期
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秀吉の思い付き、仕事を三倍つかまつる
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 秀吉の「中国攻め」出陣に際してのエピソード。信長は天下制覇を目の前にして最後の難敵、中国十カ国を治める毛利氏の討伐に矛先を向けた。作戦は山陽道を秀吉の担当とし、山陰道を光秀にまかせることになっていた。攻略に先駆け、酒宴で信長は、秀吉、光秀二人に対して何年でそれぞれを制圧できるかと尋ねた。先に光秀は自信たっぷりに「十年以内には」と答えた。信長は不快な表情で秀吉に視線を向けた。秀吉はニコニコ笑い「それがしは三年以内に」と楽観的に答えた。光秀は席を立って、居城に戻って激怒したという。「できもしないことを軽々しく言うとは」
 ところが秀吉の言い分は違っていた。「わしは光秀様より三倍仕事をつかまつる」と語り、山陽道制圧というビッグプロジェクトに合わせて、背水の陣で立ち向かうという自意識をしっかりもつことにあった。人並みに仕事をしたのでは人並みの結果しか出せない。人の三倍働くことによって、もっと良い結果がでるのではないか。これが秀吉の持論であった。
 これは当たり前の話であるが、今の時代も人の三倍仕事をすれば、もっと効果があがるだろうが、なかなかむずかしい。
【文:高田 金道】