戦国新報
 
 
平成7年 前期
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部下に選ばれた大将、北条氏政
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 北条氏康は、早雲の孫にあたる武将である。隠居して息子の氏政に家督をゆずった時、「お前は今、何を楽しみとしているか」と尋ねた。氏政は「部下の能力を判断することを楽しみとしています」と答えた。氏康は「それは大事なことだが、大将が部下を選ぶのはあたりまえのこと。しかし部下が大将を選ぶ時もある。日頃、部下を愛し、民をいつくしまなければ、大事があった場合、皆去ってしまう。生まれながらの大将として育つとそれがわからなくなるから、十分心しなくてはいけない」
 不幸にして氏政は父の教えを生かせず、その子氏直も、秀吉との小田原合戦でその優柔不断なところをつかれ、秀吉の軍門にくだっている。しかし、秀吉の大軍に半年の篭城に耐え、しかも裏切り者も少なく、さらに氏直が許され高野山に赴いた時も、命を捨ててこれに従おうとする者がきわめて多かった。それだけ人材が育っていたわけである。早雲以来、特に氏康の代に育てたものが大きかったと思われるのだが、その人材も大将に人を得なくては十分に生かされないということだと思う。
 普通は指導者が人を使って仕事をしているように思えるが、見方によっては指導者の方が使われているような気がする。口では「ああしろ、こうしろ」と命令しても、心の中では「頼みます。お願いします」といった気持ちを持つことが大事なことではないだろうか。
【文:高田 金道】