その時、本能寺にいた信長の側近は、たった五十人ほどだったといいます。天下統一の野望を秘めていた信長は、その時自分の力というものを完全に信じ切っていたし、まさかこの天下の信長を討とうと考える人間は、いるはずがないと自信過剰気味に、思い込んでいたと思われます。若干二十七歳で桶狭間で今川義元を討ち取って以来、天下統一をすることに絶対の自信を持っていたのです。この絶対の自信が彼をまったくの怖いもの知らずにしていました。まさか自分の部下である明智光秀が、謀反を起こすとは夢にも思っていなかったし、ましてその疑心があったなら、わずか五十騎ほどで、まったく無防備な寺院などには泊まるはずはなかったと思います。
信長にこの絶対の「自信」と、そして部下に対する少しばかりの「謙虚」さがあったなら、本能寺の変はあるいは……と思うのですが、はたして歴史はどう変わったことでしょうか。
|