人の長所を生かして短所は見逃す。これが家康の人材登用の方法であった。短所があるからといってその人物をしりぞけたりしないで、長所を生かして短所は見逃す…
家康は言う。「野原には薬草もはえれば毒草もはえる。人間にもよい部分と悪い部分がある。しかし場合によって仕事ができる人間であれば、たとえ悪いところがあっても切り捨ててはならない」また、こんなことも言った。「親がりっぱでも、子がそうだとは限らない。人が代々続く間には、愚かな者も現われる。しかしそんな家臣にこそ目をかけるべきだ。小心者に目をかけよ」力の弱い者が利益によって右往左往した時代であるから、その者たちこそ大事にしなければならない、というわけである。
すぐれた人間とそうでない者が、混然と入りまじっているのが世の中なのであるから、すぐれた者だけを集めて、そうでない者を除外しようとしなかったところに、家康が多くの家臣にめぐまれた原因がある。家康の庇護のもとでは、毒草もときには薬草となったのである。
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