戦国新報
 
 
平成9年 前期
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相手の性格をつかむ
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 寒い朝、草履を胸に暖めていた秀吉に信長は「サル、俺の草履を尻に敷いていたな」と足で蹴飛ばすが、秀吉の汚れた胸を見て「なかなか気の利く奴だ。かわいいやつよ」と評価した。
 ところで秀吉がもし、明智光秀の家来で信長の時と同じように草履取りをしていたとすればどうだろうか。学者肌の教養人で真面目な光秀は感情的な言葉を口にすることなく静かな口調で「草履が暖かいがどうしたのだ」と尋ねる。秀吉の汚れた胸をみて、心の中では「なんとわざとらしく調子のいい奴だ。この男に油断は禁物だ」と不信感と嫌悪感を持つに違いない。
 また、家康だったらどう思うであろうか。秀吉の汚れた胸を見て「秀吉、こんなことはしなくてもいいぞ。寒い思いをするじゃないか」と、気の利く奴とも思わないし評価もしない。家康は戦場での働きは評価するが、少しの気配りだけでは決して評価はしない。
 いつの世も同じことをやっても、相手の受け取り方がまったく違うことがあるようだ。気を利かせる時は相手の性格を見抜いて対処することである。今の不況な世の中「人の心の痛み」をわかるように努力していかないとダメなような気がする。だがなかなかむずかしい。
【文:高田 金道】