戦国新報
 
 
平成5年 後期
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決断力のない息子に遺言をする時、
草履の片方と下駄の片方を贈った黒田如水
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 関ケ原の合戦で、黒田如水は、自分は西軍につき息子の長政を東軍に味方させた。どっちが勝っても負けても家そのものは安泰になるという、現代の企業社会でもよくある手段をとった。
 この黒田如水が死ぬ時、息子に遺言を残した。その時、遺品として、片方の下駄と片方の草履を贈った。長政には遺品の意味がまったく理解できなかった。考え込んでいる息子をみて如水は笑いだした。「またいつものお前の悪い癖がはじまったな。その遺品は何の意味もない。お前はいつも物事の裏ばかりを考える。考えなくていいことにこだわり決断力に乏しい。俺が死んだ後この家を守るのはお前しかいない。多くの家臣を率いていかなければならない。そのトップにとって大事なのは決断力だ。」そして如水はこう言った「決断が鈍るようなことがあったら、その時は必ずこの草履と下駄の片方を出してじっと見つめろ。そして父の言葉を思いだせ」 父の真意がわかって長政は涙ながらに感動した。如水が死んだ後、黒田長政は誰よりも優れた決断力のある武将になった。
【文:高田 金道】