戦国新報
 
 
平成5年 後期
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ライバルがいるからこそ自分も成長する
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 武田信玄が死んだ時、徳川家康はこう言った。「じつに惜しいことだ。信玄のような強い大将がいればこそ、こちらもそれなりに技を磨き、兵も鍛える。その目標がいなくなってしまったので自分だけでなく部下も安心してしまう。なかには信玄の国を攻めようとする者もでてくるだろう。が、自分はそんな武士の風上にも置けないことはしない。しかし信玄が死んだ後、誰が弓矢の師になってくれるのか心もとない。まことに惜しいことだ」 本当にそう思ったかどうか、多少負け惜しみがあったようだが、このことから“律儀な人”として世論は家康を支持していった。
【文:高田 金道】