戦国新報
 
 
平成4年 前期
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「能ある鷹はツメを隠す」
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 人は、自分の能力以上に、時分を良く見せたいのが本音。信長はまったくその逆の行動をした、歴史上一番のパフォーマンス人間である。
 信長は少年時代、柿の実をかじりながら裸足で歩いていたことや、父、織田信秀の葬式の最中にいきない飛び込んで、香炉を投げつけた話など実にさまざまなエピソードが残されています。そしてそれらは、信長がいかに奇人、変人であったかということを証明しています。ところが、そのすべては、戦国の世を生き抜くための、彼の演出した芝居であり、周りの目を意識した行いであって、まったく見事なパフォーマンスとしかいいようがありません。信長の本当の姿は、香炉を投げつけた後、ひとり自室にこもり父を想い、泣いていたというところにあります。
 信長のパフォーマンスは、自分が頭のおかしいうつけ者だということを、広く世間一般に印象づけることにあったようです。信長は、自分は取るに足らない人間で、どうしようもないバカ者だということを、もっとも身近な自分の身内にもそう思わせてしまうという、天才的な演技者でした。当然のように、近隣の武将達は信長に対してはノーマークになってしまう。味方をあざむいた演出が効果を現してくるのです。
 とりあえず今はカヤの外にいて、実力がついてきたら、政治の表舞台に登場するという、天性の政治家としての素質をもっていたと思われます。
 「能ある鷹はツメを隠す」といいます。我社も「謙虚」な気持を忘れることなく、住宅造りにがんばっています。
【文:高田 金道】