戦国新報
 
 
平成13年 後期
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サルとたぬきの駆け引き
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  今、我が村のポンポコ山で世界の動物園をやっています。「サルの芸」もやっています。ちょっと離れた所には「たぬきの牧場」もあります。 昔からサルは「サル知恵」と言われこざかしく、たぬきは人をだますと言われ、ずる賢い動物とも言われております。 戦国の世、「サル」と呼ばれた秀吉と「たぬきじじい」と呼ばれた家康。二人は小牧長久手の合戦で対立した。形の上では秀吉の勝利となったが、家康は秀吉になかなか頭を下げない。秀吉は母親まで人質に差し上げ、さすがの家康も無視することができなくなって、秀吉と対面することになった。 前の晩、突然秀吉が家康の宿を訪れた。家康は驚いて迎えたが、秀吉は世間話をしながら「わしは知っての通り農民の生まれ、地位や身分がよくないので諸大名はなかなか服従してくれない。家康殿がうらやましい限りです」と家康を持ち上げ、さらに「私は明日、諸大名の前で、わざといばった態度で天下の平和のためにと話すので、家康殿はどうか頭を下げて対応していただきたい」とお願いした。 当日、秀吉は、諸大名の前で人を食った「サル芝居」を演出し、家康も見事にたぬきぶりを発揮し、秀吉に忠誠を誓った。最後に「家康殿、上洛大儀であった」。この一言で天下が完全に秀吉のものになった。サルとたぬきの大芝居である。 世の中、大変不況である。サル知恵やずるがしこいたぬきのやり方では、この不況を乗り切れるはずがない。サルもたぬきもこの不況には勝てないが、芸はおもしろい。なかなかむずかしい世の中だ。
【文:高田 金道】