戦国新報
 
 
平成11年 後期
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他人のため世のため
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 ある製薬会社の若い営業マンが取引をしたいと思って、ある大きな病院に毎日のように足を運んでいた。だが、他の問屋さんが入っているためなかなか取引してもらえなかった。ある日この病院が改装工事のため大掛かりな引っ越しをすることになった。病院は男手が足りないだろうと思い、この営業マンは手伝いを申し出て、土日の休みを返上して汗をかきながら一生懸命手伝った。その後、取引をお願いに行ったところ、婦長さんに呼び止められ、大量の薬の注文をもらった。突然のことで「どうして」と事情を聞いたところ、婦長さんは「今までの問屋さんは、一番人手の欲しい引っ越しの時手伝いに来てくれなかった。あなたは注文も出していないのに一生懸命がんばってくれた。感謝しています。」と言ったという。
 戦国の世、山内一豊という武将は、関ヶ原の合戦直前、徳川軍の会議中、各武将の前で、自分は家康殿に人質を差し出し、国とたくわえの兵糧も全部進上する決意だと述べた。家康は一豊の忠誠心と決意に「うれし涙」を流した。終戦後、一豊は六万石から一躍土佐二十四万石を与えられている。
 世の中、自分のことだけ考えていれば駄目だ。他人に役立つことを考えてこそ、自分にも役立つ良い情報が入ってくるような気がするが、なかなかむずかしい。
【文:高田 金道】