戦国新報
 
 
平成10年 後期
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友情
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 秀吉は自分の部下の中で、百万の軍勢を与えて戦いをやらせてみたいのは大谷吉継だと誉め称えた。それほど吉継という武将はすばらしい知恵の持ち主であった。
 その吉継が秀吉亡き後、親友の三成から家康打倒の計画を打ち明けられた。その時吉継は「次の天下人は家康しかいない。三成、お前は確かに頭はいいかもしれないが、勇気が足りない。頭だけでは天下は取れないから家康打倒の計画はやめるように」と諌めたが、三成のために死ぬ道を選んだ。
 利害損得で動く武将が多い中、どうして吉継は三成に加担したのか。その理由は、秀吉の茶会での出来事であた。大名達が茶を回し飲みしていた時、吉継が飲もうとすると、茶碗の中に自分の顔から「膿」が一滴垂れた。吉継は顔にらい病をわずらっていた。「膿」の入った茶碗が次々に回っていったが、誰も飲むふりをするばかりであった。ところが三成に茶碗が回っていくと、三成はおいしそうに喜んで一気に飲み干したのである。吉継は三成の姿を見て涙を流し、生涯この恩は忘れないと誓ったのである。吉継は関ヶ原の戦いで西軍の三成を裏切る武将の多い中、最後まで奮闘し敵をてこずらせ見事に腹を切って果てたのである。
 いつの世も友情はいかに大事であるか、また不況の世の中、人と人とのつながりがいかに大事であるか。だがなかなかむずかしい。
【文:高田 金道】